Workshop Appendix

AIを日常の道具にした
1人の実践記録

Claude Code初操作つまずきラボの主催者・なべ@出張多めが、自身の業務・研究・学習で
実際に組み上げてきたAI活用パターンを、第三者にも届く形で結晶化した付録です。
「ここまで使い込めるんだ」という到達点と、「こうすれば近づける」という型を共有します。

5
並列AIエージェント
3PC
役割分担構成
73→7
スキル最適化
v2.6
ワークショップ反復
L2+
第二の脳基準
SECTION 01

使っているAIツールと役割分担

1つのAIで完結させない。質・量・専門性で5系統を併走させ、それぞれの得意分野に仕事を寄せる。月額予算は約 $246 (Cursor抜きで $226)。

ツール 主な役割 使い分けの軸
Claude Code
Opus 4.7
オーケストレーション本丸。文章質・判断深度・ZK ノート作成・知識統合。 「質を取る」とき。深い推論・並列サブエージェントの司令塔。
Codex CLI
GPT 5.5
大量grep / 並列実行 / Web検索 / 画像生成 (内蔵 image_gen)。 「量・速度・並列・Web」を取るとき。Bash経由で複数本同時投入。
Cursor
v2.6 Pro
エディタ密結合。実装中の即時補完と短いリファクタ。 コード編集の文脈で手元から離れない補佐役。
Gemini CLI
AI Pro OAuth
長文要約・別視点レビュー・Google Workspace連携。 1,500 req/日の枠で軽量タスクを散らす。
Opencode
GLM-5.1
早期ベータ枠。ローカル指向のサブセカンダリ。 $6/月で並列数の余裕を作る。
Ollama
qwen3.5/3 32B 等
オフライン・出張時のローカル推論バックエンド。 機密文書 / ネット不通環境 / 飛行機内。
ChatGPT
補助
非エンジニア導線・初心者の最初の1手・Web UIの直感性。 Claude Codeとの「役割比較」を伝える教材としても使う。
MCP servers
9種
Gmail / Calendar / Drive / Notion / Gamma / arxiv / Zotero / paper-search / Computer Use。 AIから外部サービスを直接叩く配線。MCPで日常業務へ接続。
Take-away

「ChatGPTで全部やる」は卒業。Claude (質) + Codex (量・並列) + MCP (外部接続) の3層構成にしただけで、出力の総量と質が同時に伸びる。Sonnetは使わない、というルーティング判断が決め手。

SECTION 02

1人で 3台のPC を役割分担させる

出張が多い働き方ゆえ、用途の違うマシン3台を「協働する1チーム」として運用している。各PCに担当領域があり、Google Drive と shared-claude-memory で状態を共有する。

Tier 1 · 携行AI機

Cockpit

MacBook Pro M4 Pro / 48GB / 2TB

出張のメイン。個人知識作業・論文査読・翻訳・ZK・GDrive Inbox処理。

  • Claude Code / Codex / Cursor / Gemini / Opencode
  • Ollama 32Bモデル × 3
  • Marp / Obsidian / Zotero
Tier 2 · GPU母艦

MotherShip

Ryzen 9 / RTX 5060 Ti / 64GB

CUDAタスク・Windows常駐・OneDrive依存業務・Outlookメール最終配置。

  • 大規模ローカル推論・モデル学習
  • Discord Bridge で Cockpit と通信
  • GPU依存の動画/画像処理
Tier 3 · 自動化番

GateKeeper

OpenClaw / 常駐Browser自動化

ブラウザ自動化・常駐監視・受動タスクの実行係。

  • OpenClaw でWebサイト常駐操作
  • cron的な定時ジョブの肩代わり
  • 失敗時はntfy/Discord通知

判断フロー: どのPCに何を投げるか

Decision Tree
  • Q0: オフライン? → Cockpit単独 + _offline_queue に積む
  • Q1: OneDrive必要? → MotherShip (Discord Bridge経由)
  • Q2: GPU(CUDA)必要? → MotherShip (GD Feedback)
  • Q3: Windows常駐連携? → MotherShip
  • Q4: 最終配置がOneDrive/Outlook? → Cockpit作成 → MotherShip配置
  • Q5: ブラウザ自動化/常駐監視? → GateKeeper (OpenClaw)
  • 全No: Cockpit単独完結

3台のClaude/Codexは shared-claude-memory/feedback/from-{mac,ms,gk}/ でフィードバックを循環させ、互いの作業ログを学習材料にしている。

Take-away

「マシン1台=役割1個」と決めるだけで、「どっちで作業するんだっけ」のスイッチングコストが消える。出張が多いほど効果が大きい。判断フローはたった6問。

SECTION 03

構築したワークフロー 5パターン

場当たり的に指示するのではなく、パターンとして固有名詞をつけて運用している。ユーザーが「ralphで」「ultraworkで」と発した瞬間、AI側のモードが切り替わる仕組み。

Internal Ticketing Pattern
作業前に TaskCreate でN件のチケットを発行し、状態機械として消化する。LLMが弱い実行機能を「外部L2メモリ」で補う発想。
TaskCreate × N → in_progress → 並列dispatch → completed → 集約
3+独立サブタスクが見えた瞬間に起票。WIP制限は3-5件。
PDCA Cycle 反復
資料・教材を「リリース→ペルソナレビュー→修正」で何周も回す。今回のワークショップ資料は v2.1 → v2.6.5 まで Cycle 3周以上。
Plan → Do → Check (6ペルソナレビュー) → Act → 次サイクル
完璧を目指さず、複数サイクルで運用知見を積む。
Wave Execution
独立タスクが3件以上あるときの並列実行テンプレート。サブエージェントを波状に走らせ、合流点で集約する。
Wave1 (調査×3) → Wave2 (生成×4) → Wave3 (検証×2) → 統合
「サブエージェント構成しつつオーケストレーションして」が合言葉。
RALF Loop
自律ループ実行 (oh-my-claudecode:ralph)。長尺タスクをAIに自律駆動させる。「ロングランしてください」で発動。
目的設定 → 自律ループ → 中間チェック → 完遂報告
寝ている間も作業継続OK。スリープ設定を伸ばして任せる運用。
Zettelkasten 結晶化
業務知見を「第二の脳」に保存。Permanent / Literature / Structure / Technology の4分類で、L2基準 (alias 4種・Evidence・wikilink 3本+) を満たすまで肉付ける。
Today/ → Pending/ → Permanent (L2+) → Dashboard MOC
ノートが「7秒で再想起できる」状態を維持基準に。
Persona Review
教材を6ペルソナ (非エンジニア/フリーランス/開発者/初学者/中級者/ファシリ) で並列レビューさせる。全員 ≥7/10 が出荷基準。
資料 → Codex 6並列レビュー → スコア集約 → P0/P1修正
「自分視点」では見えない穴を、AIに6人分の目をさせて潰す。
「LLMはcontext windowというL1メモリ1層しか持たない。チケットを切ることはL2メモリ層を与える行為であり、お利口に見える正体は memory hierarchy の創発である。」
― Internal Ticketing Principle (本人ZKより)
Take-away

パターンに 名前をつける だけで、AIへの指示が短くなる。「ralphで」「Wave組んで」「ペルソナレビュー」の数語で文脈が伝わる体制を作るのが、生産性の本丸。

SECTION 04

3系統のハーネス基盤を併走

AIエージェントを動かすための土台 (ハーネス) を、責務ごとに3つに分割している。1つに統合せず、あえて並立させているのがミソ。

~/.agent/ — 共通スキル基盤

2,729 files

Claude / Codex / Gemini が共通で参照するスキル群。Marp Light Theme・ZK操作・Layout Fix など2,729ファイル。Windows起源の資産をMacへ統合済み。

Marp依頼が来たら必ず 74_marp_zk_study + 71_layout_fix を先読みする等、ルーティング規約も内包。

~/.local-harness/ — Codex 研究OS v7

334 files

Codex の長時間実行に特化した研究OS。00-11_番号付きdocs/, tickets/, content/ZK/ という構造でタスクを永続化。SQLite (knowledge.db) に people / facilities / zk / tech / events を index 化し、ZKの「L2脳」として機能。

~/.claude/ — Claude Code 診断 + Skill Library

25指標

Claude Codeの診断 (review-harness) と Evidence永続化。スキルは グローバル最小 + ワークスペース別 opt-in 構成。グローバルは session-handover + weekly-pdca の2件のみで、各worktreeから symlink で必要なスキルだけ参照する。

73スキル一律注入 → 7〜64件にダウンサイズ。「scan-all禁止」をルーティングテーブルで明文化したことでルーティング精度が回復。

Take-away

スキルもハーネスも「持てば持つほど良い」訳ではない。軽量デフォルト + 必要分だけopt-in の設計が、context window という有限資源を守る。

SECTION 05

具体的なプロジェクト事例 5件

ポートフォリオの心臓部。それぞれ「何を、どのAIで、どう解いたか」を載せた。

① Claude Code初操作つまずきラボ v2.6.5

2026-04-21 → 04-26 / 6 day sprint
Claude Opus 4.7 Codex GPT 5.5 Marp Cloudflare Pages GPT Image 2

Claude Code初心者向け120分オフ会の 教材一式 (戦略 / 告知 / DM / 当日進行 / 事後 / 配布物) を、Claudeをオーケストレーター、Codexを並列ワーカーとして6日間で構築。スライド16枚・ハンドアウト・プロンプトHUB・FAQ・自習手順書・受付サイン・5ランク学習ロードマップを一括生成。

画像18枚を Codex 内蔵 image_gen で並列生成。18のHTMLアセットを Playwright + Chromium で desktop / mobile 自動 visual audit。配布ZIPを build_distribution.sh でワンショットビルド。

結果: 6ペルソナ全員レビュー ≥7/10 達成。Cloudflare Pagesで claude-code-for-beginners.pages.dev に公開。GitHub git log で20コミット分の反復改善が追跡可能。

第二の脳 としてのZettelkasten Vault

継続運用 / 案A構造 2026-04-22 migration
Claude Opus 4.7 Obsidian git + LFS SQLite

133GB規模の個人vaultを「真鍋の第二の脳」として運用。Daily Ops / Project Hubs / Facility Hubs / ZK本体 / People (37名+) / Outputs / Events / Templates の8階層に再編。全 Permanent ノートに L2基準 (alias 4種・Evidence・wikilink 3本+・Confidence) を強制し、検索性・再想起性・深掘り性の3条件を担保。

git戦略は vault/init 専用ブランチ + .gitignore で 131GB 除外 + LFS で大容量を分離。pre-commit hook で Today/ への誤置きを阻止 (Rules without enforcement = decorations の原則)。

結果: 月次 audit を zettelkasten-ops スキルで scorecard 化。「7秒で再想起できる」が運用基準として定量化。

Internal Ticketing + 並列サブエージェント体制

原理結晶化: 2026-04-21
Claude Opus 4.7 Codex 並列 exec TaskCreate API

「LLMはL1メモリ1層しか持たない」という認知科学的観察から、チケット (TaskCreate) でL2メモリ層を外付けする パターンを発明・運用。Codex exec を env -i + 直接バイナリ + プロンプトファイル化で安定起動させ、3-5本並列で Map-Reduce 実行する設計。

2026-04-21 のMRI研究タスクで初実証、ユーザー本人が「お利口な動きをしている印象」と評価して原理結晶化。Permanent ノート Internal_Ticketing_Principle に格納。

結果: CLAUDE.md に「default-onで起票」をルール化。3+ 独立サブタスクが見えた瞬間にチケット発行が反射的に走る体制へ。

④ AI画像生成パイプライン (GPT Image 2 via Codex)

2026-04-22 → 25 / v2.2 → v2.4
Codex 0.122+ GPT Image 2 / gpt-5.5 CODEX_HOME 隔離

Codex CLI 内蔵の image_gen ツールで GPT Image 2 を呼び出す並列生成スキル run-ai-images を構築。デフォルト4枚を CODEX_HOME per-invocation 隔離で race condition なしに生成。NYT/WIRED風 editorial flat + ブランドtokens (cream/orange/sage/text) のhex直指定 + rule-of-thirds をプロンプトに強制。

並列実行時の cache race を shasum 検出で対応。生成画像はワークショップ資料 (img_01〜18) として全資料に埋込。失敗パターン (typography 崩れ・論理矛盾) は variants/ に保管しswap元に。

結果: 6並列で約3分・18枚のbrand consistencyを保ったeditorial画像を量産。コミット f5d29b1 「Codex画像6枚を生成し各資料に埋込」。

トラブル真因究明 プロトコル (Codex zombie事件)

2026-04-24 RCA / root-cause-analysis skill
root-cause-analysis env -i ラッパー codex-safe.sh v2.1

「Codex execが無音exitする」症状を、5段階RCAプロトコル (症状 → 物的証拠 → 対立仮説 → 検証 → 構造的原因) で究明。真因は SkyComputerUseClient notify hookが複数セッション横断でゾンビ化し、新規execがnotify socket競合で死んでいた。

対症療法 (pkill) と構造対処 (codex-safe.sh v2.1: gtimeout + env -i + 直叩き) を分離。Gotchaは症状だけでなく真因+構造対処+予防の3層で記録する ポリシーを ZK化。

結果: 並列3本のCodex execがleak ゼロで実証 (2026-04-26)。ハマっても「仕方ない」で片付けず、構造原因まで掘る習慣の見本ケース。
Take-away

事例には共通点がある: 「単発で終わらせず、原理を結晶化して再利用可能にする」。ワークショップも、画像生成も、トラブル対処も、すべて Permanent ノートになって次のプロジェクトに転用される。

SECTION 06

学習・方法論ハイライト

道具より大事な「使い手側の型」。ワークショップ参加者にも持ち帰ってほしい考え方。

5ランク学習ロードマップ

教材体系化

Claude Code初心者から上級者までを「時間 × 難易度」で5段階にマッピング。今回のワークショップは R1〜R3 を120分で歩かせる設計。

R1
セットアップ
Mac/Win 共通の入り口
R2
最初の1作品
単語帳メーカー
R3
実務応用
プロンプトHUB / カスタマイズ
R4
高度化
CLAUDE.md / セッション制御
R5
エージェント設計
MCP / サブエージェント

PM責任者パターン (魔法の呪文 CLAUDE.md)

セッション冒頭テンプレ

非エンジニアにこそ書いてほしいセキュリティ guardrail を、CLAUDE.mdの「絶対禁止4条」+「PM責任者設定」の2要素に圧縮。両学長Trunscript (2026-04-25) の解析から導出。

  • 絶対禁止4条: APIキーをコードに書かない / 個人情報をgitにコミットしない / 自前認証を作らない / GitHubをpublicにしない
  • PM責任者設定: 冒頭1プロンプトで重い処理を部下AIに委任しながら会話を継続させる仕組み
  • 「私は非エンジニア。専門用語なし。リスクは先に教えて」を書くだけで説明の質が劇的改善

6ペルソナ並列レビュー方式

PDCA Check工程

教材出荷前に 6人格 (A:非エンジニア / B:フリーランス / C:開発者 / D:初学者 / E:中級者 / F:ファシリ) を Codex 並列で走らせ、各々10点満点でスコアリング。全員 ≥7 が出荷基準。Epsilon Cycle 3 で全ペルソナクリア。

「自分の視点1個」では見えない、業界・前提知識・期待値の差を、AIに6人分の目をさせて潰す。

判断の所在を残す設計 (Long-term Vision)

Philosophy

「速くて何でもやるAI」と「判断の所在を見失わないAI」が天秤になったとき、後者を優先する設計選択を取る。

  • 自律性追加時はEscalation経路がセットで用意されているか確認
  • 効率化の前に「ユーザーの主権を奪っていないか」を点検
  • 思想変更を伴う改修は急がず、別セッションで brainstorming してから判断
  • Wording も「殺す/kill」のような強い語を避け「停止/終了/クリーンアップ」を選ぶ
Take-away

AIを「使い倒す」のと「主権を譲り渡す」は違う。判断・誠実さ・役割分担 の3要素を意識し続けることが、長く付き合うコツ。

SECTION 07

現在の課題と次の展開

事例集を「自慢」で終わらせないために、まだ未解決のものをそのまま載せる。

未解決の課題

Open Items
  • Codex zombie の長期監視: blanket pkill は SuperSet 10並列ターミナル運用と相性が悪い。lsof/ppid/etime の3点判定で安全に消す手順をスキル化中。
  • Today/ ゴミ溜まり問題: Obsidian newFileFolderPath が Today/ をデフォルトにする副作用。pre-commit hook で阻止しているが、根本的にはObsidian側の設計と折り合う必要。
  • Permanent ノート L1 stub の残存: 2026-04-22 migration で「ファイル配置は完了」したが「第二の脳として機能するまで」は未達。週次 maintenance で L0/L1 を抽出 → L2化 or 削除する運用を回し中。
  • 3PC 体制の自動化: 現在は Discord Bridge / GD Feedback / shared-claude-memory の3経路だが、AutoMaton (PC mesh) で1段階抽象化したい。

次の展開

Roadmap
  • ワークショップ第2回: 初回参加者の satisfaction & repeat意思を見て、月1 or 隔月で定期化判断。Windowsペアセットアップ枠を明示化。
  • 事例シェア会フォーマット: 「自分の自動化を見せ合う」を独立イベント化 (Mercari出品自動化 等の事例が初回で登場)。
  • Learning Exchange 双方向版: ルーマニアのAndreeaとJP↔EN相互レクチャ継続。資料も日英並置で蓄積。
  • vault publishing: Permanent ノートの一部を public化。ZKを「他人にも読める第二の脳」へ昇格させる検討中。
「1回の完璧より、2-3回で運用知見を積む。低コストで複数回回す。」
― 開催戦略 v2 より
Final Take-away

このポートフォリオは到達点ではなく 進行中のスナップショット。読者にとっての価値は「ここまで使い込めるという実例」と「同じ型を自分の業務でも組める」と気づくこと。最初の1歩は、いま開いている資料を Claude Code でビルドし直してみることから。